ニコンのこだわり ~マイクロレンズと実効F値表示~
ニコンのカメラを使っていると他のメーカーにはない強い”こだわり”を感じることがある。
もちろんそれは私がニコンが好きで多少ニコンびいきなためそう思えることもあるだろう。
しかし、事実ニコンの一眼レフカメラは他の国産カメラメーカーのカメラと明らかに違う仕様があり、それが良くも悪くもニコンらしさを演出する一つの要因になっていると私は思う。
今回はマクロレンズも買ったので、前に書いたニコンの”マイクロレンズ”のことと”実効F値表示”について話そうと思う。
”マイクロレンズ”のことと”実効F値表示”について話そうと思う。と”実効F値表示”なんて言葉はニコン以外のカメラを使用している人にとって一生縁のないような言葉で、特に最近のデジカメから始める人にとっては特に意味のない知識かもしれない。
他のメーカーは右向け右で揃えているのにニコンはその真逆をいっている。
ただ、それは別にニコンが偏屈だからとか言う訳ではなくそこにはニコン独自の哲学、企業理念があるのかもしれない。
-マイクロレンズ-
普通、近距離撮影するときに使用するレンズは”マクロレンズ”と呼ぶ。
現に上の写真にあるシグマのレンズはMACRO(マクロ)という表記があり、これはキヤノンやペンタックス、オリンパスにソニーなどのカメラメーカーも共通していることで自社の近接撮影用レンズはマクロレンズという名称を使用している。
ではなぜニコンだけ”マイクロレンズ”と呼んでいるのか?
MACRO(マクロ)
MICRO(マイクロ)
似たような言葉であってこれらは似て非なるものである。
マイクロはミクロとも読まれるが、ミクロはとても小さいものを表すときに使い言葉だ。
単位で言うと百万分の1を表す。
ミクロ経済と言われれば経済主体の最小単位の経済主体を取り扱う分野だ。
マクロはその逆。
マクロ経済といえば一国経済全体を扱うより大きい単位の経済を取り扱う。
つまりミクロはとても小さく、マクロはとても大きなものを表すときに使う言葉。
では、”マクロ撮影”とはどういう撮影のことなのか。
マクロ撮影は接写とも呼ばれ、被写体に接近して被写体を1/2倍や等倍などで撮影できるレンズのことである。
ここでいう等倍とはまぁでっかく物を写すことと思っていただけたらいいが、その定義はフィルム上に同じ大きさで物を写すことを指す。
簡単に言うと10円玉を等倍撮影し、その10円玉をフィルムの上に置けばフィルムに写った10円玉とぴったし重なるというわけだ。
そしてそんなマクロ撮影ができるレンズだから”マクロレンズ”。
なるほどこれは理にかなっている。
が、ではなぜニコンは”マクロレンズ”ではなく”マイクロレンズ”なのか?
実は古い辞典ではマクロ写真の定義を「原寸大以上の倍率で撮影する写真」と定義れている。
つまり、等倍ないし2倍、3倍などで撮影された写真でないとマクロ写真と呼べないのだ。
これを満たせるのは顕微鏡のような拡大光学系のレンズだ。
ニコンがカメラ用のマクロレンズを開発した当初、ニコンはすでに立派な拡大光学系(顕微鏡等)を開発・販売しており、当時のニコンは1/2倍から等倍程度の近接撮影用レンズとマクロレンズとは明確な区別をしたかったのである。
これぞまさにニコン流のこだわりと呼べよう。
他のメーカーならマクロレンズというその商品よりもより性能のいい物の名を冠して、虎の威を借るのではないが聞こえの良い商品名で売ってしまうところをニコンはそれを良しとしなかった。
これ以来ニコンは自社の等倍、1/2倍できるレンズをマイクロレンズと呼んでいる。
当時の真面目な技術者の想いが”マイクロレンズ”という表記には表れているのである。
-実効F値表示-
これもまたニコンが他社にないこだわりを見せている部分である。
しかしそれは全てにおいてユーザーのためを考えているかというとそうでもないこともある。
実はマクロレンズ(紛らわしいんでマクロレンズという表記を使う)は、撮影距離に応じて絞りを絞らなくてもF値が変化する。
これは近接撮影時にはピントを合わせるためにレンズを繰り出すため画素素子に届く光の量が減るためである。
簡単に説明するとレンズを懐中電灯、被写体を壁にすると壁に当たっている光は壁と懐中電灯が近い時は光は強い。
しかし、懐中電灯が壁から離れると壁に当たる光は弱まる。
つまりレンズを繰り出せば(レンズが長くなれば)、画素素子に届く光が弱まるということだ。
便利ズームでワイド端とテレ端とでF値が変わるのもそのため。
マクロレンズは焦点距離の変わらないがレンズがズームするレンズと思ってくれればいい。
そのため昔のマクロレンズは近接撮影する際レンズの先端がかなりズームするが、それが嫌でインナーフォーカスのこのレンズを買ったことは前にも話したと思う。
まぁ、とにかく撮影距離が近づけば近づくほどレンズが伸びてF値が上がる。
そしてそのF値を測るために撮影距離に応じて露出倍数を現在のレンズのF値にかけてやり、その数値を”実効F値”と呼ぶ。
この実効F値、昔は重要なものだった。
特にマニュアルで近接撮影をする際は撮影距離に応じて露出倍数をかけ実効F値で露出を合わせないと暗い写真が撮れてしまうというわけだ。
つまり、100mmで撮影距離が30cm程度になると開放F2.8で撮影しても、F5.3で露出をあわせないといけないということだ。
しかし、露出計測も設定もデジタルな世の中になった現在はどのカメラメーカーも実効F値でなく”公称F値”つまりは露出倍数をかける前の数値を表示することにしている。
ただ、ニコンのみが”実効F値”を表示しているのだ。
さて、この”公称F値”と”実効F値”。
それぞれどんなメリットとデメリットがあるか。
正直、デジタルカメラにおいては”実効F値”表示はデメリットしかない。
なんせ、今自分が開放から何段絞っているのかわからないのだ。
例えばニコンのカメラを使い、開放F2.8のマクロレンズで1段絞って撮影したいとする。
無限望状態なら開放はF2.8なのでダイヤルを1段分回しF4にセットするだけでいい。
ただし、近接撮影になるとF値がどんどん増えていき、最短撮影距離時にはF5.6となる。
ちなみにこれは最短撮影距離時の開放状態であり、この場合1段絞るならまたダイヤルを1段分回さないといけない。
このようにニコンのカメラは撮影距離に応じて何段絞るか逐一設定しないといけないのだ。
キヤノンのカメラなら絞り優先にしても公称F値が表示されるのでどの撮影距離であっても、開放F2.8のマクロレンズならF4にしとけば全域1段絞った設定で撮影できる。
その場合、シャッタースピードが変化することになるが。
ニコンも絞り優先時は1段絞った状態を維持して実効F値が変化してくれればいいのだが、そうは問屋がおろさない。
今までキヤノンでマクロレンズを使ってきた身からすると大変面倒で分かりにくい。
撮影した写真データも実効F値で記録されるため、どれだけ絞り込んで撮ったか分からないのだ。
ただし、これもニコンのこだわりなのだ。
う~む・・・。
正直、公称F値と実効F値を切り替えできるようになればベストだと思う。
そうすればニコンのこだわりを捨てることなく、ユーザーにとって便利なカメラになるのだが。
多分そこは譲らない。
これこそニコンなのだ。
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